プールでバタフライが泳げるのに、バランスボールに座れない?

皆様はじめまして。パーソナルトレーナーの大久保進哉です。
パーソナルトレーナーは、お客様の個性やご要望に応じて、健康や運動の問題解決、自己実現のお手伝いをさせて頂く仕事です。以前は、アスリートや芸能人などの著名人が私たちを利用することが多かったのですが、日本の高齢化や運動へのニーズの多様化により、一般の方々をご指導させて頂く機会も増えております。今回から、パーソナルトレーナーとしての経験談をお話させて頂きます。

病気治療後の社会復帰を目差す女性は、子供の頃から続けている水泳は得意で、難しいバタフライも上手です。しかし、簡単なバランスボールに座れない。一ヶ月で問題を解決した方法とは?


28歳で軽い脳梗塞 身体能力の回復をしたい

これは、筆者がパーソナルトレーナーになり始めの約20年前の事です。皆様はバランスボールをご存知でしょうか?最近では、かなりお馴染みになりましたが、スポーツ量販店などに置いてある、直径が55Cmから65Cmほどの大きなボールです。

さて、一般的には、バランスボールに座って、姿勢を安定する事は、そう難しい事ではありません。対して、プールでバタフライを泳げる方は、一般的には、そう多くないと思います。よって、「バランスボールには座れるが、プールでバタフライは泳げない」方が大多数でしょう。しかし、筆者が担当したお客様は、全く逆のケースだったのです!不思議だな?と思いませんか?

Aさん
・年齢 28歳
・ご要望 軽い脳梗塞を患い、身体能力が低下したので回復させたい
・脳梗塞後のリハビリとして、プールでバタフライを含めた4泳法を泳いでいる
・スポーツ歴 中学生まで水泳部
ここでのポイントは、“水泳部出身”であることです。
 

まず最初に確認したこと、考えられる原因は

カウンセリングシートにご記入頂き、日頃バタフライを泳いでいることを確認しました。次に平衡性を確認するために、バランスボールに座って頂くように、指示をしました。すると、全く座れないのです!思わず筆者は目を疑いました!「バタフライを泳げるのに、バランスボールに座れない!」新たな問題に直面したのです。では、この問題をどのように分析したのかをご説明します。

水泳のような、四肢の遠位端が,床などに接しない運動を開放運動連鎖(OKC:open kinetic chain)と言います。対して、スクワットや腕立て伏せのような、手や足部など四肢の遠位端が,床などに固定された運動を閉鎖運動連鎖(CKC:closed kinetic chain)と言います。
換言すれば、水泳は足の裏が怪我をしていても行なえる運動です。つまり、足の裏は鍛えられないのです!!よって、このお客様は足の裏の感覚低下があまり改善されていなかった事から、バランスボールに座れなかった事が推察されます。このように、身体の運動は、全身が鎖のように連動しています。このような仕組みを「運動連鎖」と言います。

運動連鎖とは?
鎖をイメージしてください。全てのパーツがダイヤモンドで出来ていれば、その鎖は引っ張っても切れません。しかし、その中にプラスチックの鎖が混ざっていたらどうなると思いますか?引っ張れば、そのプラスチックから切れて、破綻してしまいます。身体もそれと同じ事が起こります。慢性的な腰痛を抱えている人は、腰がプラスチックになっており、ビジネス用語で言えば、ボトルネックになっているのです。

Aさんの改善ポイント
・足の裏の感覚を向上する
・立位での運動を取り入れる
・抗重力筋という「立位で重力に対して正しい姿勢を維持する筋肉=大腿部、下腿部、体幹部」を向上する。

要するに、足の裏のセンサーを活性化し、足腰の筋力を向上させるのです。具体的には、バランスボールを用いながら、平衡性を改善し、少しずつスクワットなどの足腰の筋トレに移行しました。

椅子よりは若干不安定なバランスボールに座り、
右方向への回旋動作を行ないながら、右足への軸作りをしています。
ゴルフなどにも最適な動作です。Aさんは最初、このバランスボールに座ることも出来ないくらい、足が不安定でした。

 

モビリティとスタビリティを高めるバランスボール

まずはバランスボールの特徴をご説明致します。塩化ビニール製の球体です。大きく分けると二つの使い方があります。
①ボールを転がして、関節の可動域を向上させる=モビリティと言います。
②ボールが転がらないようにコントロールして、関節を安定させる=スタビリティと言います。具体的には以下のようになります。

<モビリティを高めたいケース>
1.筋肉が硬くなり関節の可動域が減少している場合。
2.身体を動かすのが億劫だが、ボールの転がりに補助してもらえば、ストレッチがしやすい場合。
3.高齢者に多い脊柱管狭窄症などのような、脊柱などの関節が動きにくくなっている場合。

<スタビリティを高めたいケース>
1.足関節の捻挫など、関節が不安定になっている場合。
2.平衡性が低下して、転倒しやすくなっている場合。
3.ぎっくり腰(筋・筋膜性腰痛)などに多いくしゃみをすると再発しやすい場合

Aさんの場合、リハビリとして行なっていた水泳は、平衡性向上の運動としては最適ではありませんでした。Aさんは、その後、座位でのバランスボールエクササイズや、立位でのスクワットなどを行い、一ヶ月ほどで、Aさんの問題は解決されました。

好きな言葉は「して見せて、言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」。

【健検公式テキスト参照p84~】

 


大久保進哉(おおくぼ しんや)


パーソナルトレーナー/フィットネスプロダクト代表
1972年横浜市生まれ。日本トレーニング指導者協会上級トレーニング指導者
運動の問題解決を行なう「パーソナルトレーナー」として、子供から高齢者まで運動指導を行なう。健康運動指導士や健康運動実践指導者養成講習会、企業、団体など講習会講師を1000回担当している。モットーは「情熱体力」。

 


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