東京オリンピック・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止対策」

 健康づくり分野で日本が世界より劣っていると言われ、対策として強化していく必要のある大きな課題の一つに「受動喫煙防止対策」があげられる。

 

健康寿命の延伸、これまでの取組とこれから

日本の平均寿命は世界一になって久しく、また、健康寿命もWHOのデータによれば日本は世界一の評価をいただいている。平均寿命に関しては戦後猛威を振るっていた結核を始めとした感染症を短期間で克服し、乳幼児の死亡率が劇的に改善したことなどがその主たる理由として考えられる。一方、健康寿命に関してはがん、脳卒中、心疾患などいわゆる生活習慣病がその高低を左右するが、世界と比較して健康意識が高く、魚や野菜中心の食生活や運動習慣があること、その結果として肥満の割合が低いことなど様々な要因が考えられる。こうした状況ではあるが、日本はこれから更なる少子高齢化社会を迎えることになり、持続可能な社会保障制度とするためには健康寿命の更なる延伸と平均寿命と健康寿命の差の縮小を達成しなければならない。

2020年には建物内と敷地内の全面禁煙を強化

日本の喫煙率は先進国の中で必ずしも低いとは言えず、外国人が日本を訪れた時、建物内が禁煙になっていないことに驚かれる。IOCとWHOはオリンピック開催時にタバコをなくすことに合意しており、近年のオリンピック・パラリンピックはそれ以前から罰則付きの法律や条例を制定するなど強制力のある受動喫煙防止対策を講じてきた。2020年には東京オリンピック、パラリンピックの開催が予定され、今以上に外国人客の増加が予想され、日本もその対応が求められている。 

こうした中、昨年11月に東京オリンピック・パラリンピックに向けて基本方針が閣議決定され、その中で受動喫煙防止対策の強化が盛り込まれた。これを受けて今年1月には政府部内に杉田官房副長官をトップとする検討チームが立ち上がり、その下のワーキンググループ(WG)で関係者のヒアリングを行うなど精力的にその対策を議論してきた。そして10月11日に開かれたWGで初めて受動喫煙防止対策について厚生労働省案をたたき台として提出した。

具体的内容は上記のとおりである。今後関係業界から本案に対する意見を聴取し、ていねいに議論を進めながらできるだけ早期に検討チームの成案を得たいと考えている。 

 

受動喫煙と関連する死亡者、年間1万5千人以上も

国内だけで年間1万5千人以上の方が受動喫煙と関連のある疾患で死亡しているとの研究結果も5月に公表され、また、受動喫煙によって肺がんのリスクが1.3倍になるとの研究結果を踏まえた「喫煙と健康影響に関する検討会報告書」(通称たばこ白書)も8月にまとまった。一刻も早い法整備が求められている。 

 

【健検公式テキストp57「受動喫煙で周囲の人にも被害が生じる」参照】

 


正林督章(しょうばやし とくあき)

厚生労働省健康課長/医師
鳥取大学医学部卒業、都立豊島病院(非常勤)後、厚生省大臣官房厚生科学課長補佐(ロンドン大留学)、WHO(世界保健機関)に勤務。
厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室長補佐、島根県健康福祉部長 厚生労働省健康局結核感染症課長、健康局がん対策・結核感染症課長を経て現職。

 


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