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蚊が媒介する感染症予防は、蚊に刺されないこと

実際の医療現場に従事されている皆さまに執筆いただき、健康に役立つコラムを展開しています。コラムカテゴリは健康マスター検定の公式テキストカテゴリーに揃えています。
公式テキストと照らしあわせていただくことで、幅広い学習をしていただけます

蚊が媒介する感染症予防は、蚊に刺されないこと

ウイルスに感染した人の血を吸った蚊に刺されて発症する、デング熱やジカ熱。海や山へのレジャーのみならず、お祭りや花火大会など、この時期、気をつけたいのが、『蚊』です。

世界で危険動物の第一位は『蚊』です

WHOによりますと、世界中で蚊によって年間72万人以上の人が亡くなっています。そのうち、年間60万人がマラリアにより命を奪われています。デング熱、黄熱病、日本脳炎なども蚊が媒介になってかかる病気です。2014年に東京の代々木公園で蚊に刺された人が、デング熱にかかる騒動が起きたのは記憶に新しいことと思います。また、オリンピックが行われているリオでは、ジカ熱が猛威を奮っており、厚労省でもジカ熱警告のPDFをホームページで呼びかけています。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000127145.pdf

WHOより抜粋 年間で人間の生命を経つ危険動物は、1位が蚊です。

 

日本脳炎ワクチン接種していない年代に注意喚起

蚊が媒介することによって発症する病気に日本脳炎があります。日本脳炎は、英語でもJapanese Encephalitisといい、日本の名前がついている疾患です。東南アジアを中心に、毎年35,000~50,000人の患者が発生し、10,000~15,000人が死亡しています。日本でも1960年代には毎年500~1,600名ほどが亡くなっていましたが、1954年から日本脳炎ワクチン接種が開始され、1992年以降は年間10人以下のレベルまで患者発生数が減少しました。

しかし、この日本脳炎ワクチンですが、予防接種後の重症合併症をきっかけに、定期接種を中止していた時期があります。厚生労働省では、平成7年~18年に生まれた方は日本脳炎の予防接種を受けていない場合があるので、母子手帳を確認するよう注意喚起しております。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/dl/nouen_qa.pdf

2012~2013年にかけて流行した風疹も、風疹ワクチンを摂取していない年代(1979年4月2日~1987年10月1日生まれ)において流行しましたので、ワクチン接種をされていない年代の方は、是非確認していただきたいと思います。

蚊を増やさない、虫除け薬も上手に活用

蚊の対策としてできることは、蚊を増やさないことと蚊に刺されないことにつきます。蚊を増やさないようにするには、たまり水を作らないことです。お庭やベランダの植木鉢の受け皿や、公園の空き缶、空き瓶、ペットボトルのキャップの水たまりでボウフラは増えていきます。溜まっている水を見つけたら、捨てたり掃除したりするなど、日常的な対応で蚊をできるだけ増やさないようにしたいものです。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/eisei/baikaikataisaku/
boushi_gekkann.files/H28poster02.pdf より抜粋

蚊に刺されないようにするには、長袖、長ズボンを着用し、できるだけ肌の露出を少なくすることが重要です。最近では、ペルメトリンと呼ばれる化学物質処理をした衣類があり、着用するだけで虫除け効果があるそうです。また、虫除けスプレーやクリームを塗るのも効果的です。日本では、虫除け効果の薬剤DEET(ディート)の濃度は12%までと規制がありますが、しっかりと蚊に刺されるのを防ぐには30%以上あることが勧められています。東南アジアなど蚊による感染症が流行している国々ではDEETの濃度が30%以上の商品が市販されていますので、デング熱やジカ熱が流行している地域に旅行や出張で行く際には、現地でDEET30%以上の虫除けを購入し、使用していただきたいと思います。
ただ、DEETは子供への使用にはその安全上制限があります。
妊婦さんや赤ちゃんなどDEETなどの化学物質は使いたくないという方には、昔ながらの蚊取り線香がお勧めです。蚊取り線香は、除虫菊に含まれるピレトリンやピレトリンの代用として化学合成されたピレスロイドが使われています。これらは、蚊やハエなどの神経に作用して神経麻痺をおこさせて退治しておりますが、哺乳類や鳥類の体では分解されるので安心して使用できます。
また、今年3月から日本でもようやく発売が開始された(世界では54カ国で発売されている)イカリジン(ピカリジン)は、子供への使用制限がありませんので、この夏は新しい虫除けを試してみてもいいのではないでしょうか?

日本健康マスター検定公式テキスト  p186「注意が必要な感染症】

 


勝木美佐子 (かつき・みさこ)

医学博士/産業医/労働衛生コンサルタント
日本大学医学部兼任講師、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会社員、日本公衆衛生学会評議員、日本産業衛生学会指導医、人間ドック健診専門医・指導医他、複数の学会で座長も務める。臨床医として診療活動と共に、産業医の経験も豊富。2016年産業医事務所を開業する。