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COPD(慢性閉塞性肺疾患) は日本人の死因第10位、原因は「たばこ」です

実際の医療現場に従事されている皆さまに執筆いただき、健康に役立つコラムを展開しています。コラムカテゴリは健康マスター検定の公式テキストカテゴリーに揃えています。
公式テキストと照らしあわせていただくことで、幅広い学習をしていただけます

COPD(慢性閉塞性肺疾患) は日本人の死因第10位、原因は「たばこ」です

 

「最近、階段の上り下りでゼイゼイしてしまう」と息切れを感じる方に、今日はCOPDのお話です。 COPDはそのまま、シーオーピーディーといいます。 正確には、慢性閉塞性肺疾患で、Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略です。

 潜在患者は530万人以上なのに、受診者は5%未満 、早期発見早期治療を

このCOPDですが、現在、日本では40歳以上の8.6%(男性13.1%、女性4.4%)がCOPDと診断されており、日本人の死因の第10位になっています。日本での潜在患者は530万人以上と推測されていますが、実際治療を受けているのは、そのうちの5%未満といわれています。

COPDの症状は、息切れや咳や痰(たん)が続くなどです。日常困っていない状況であれば放置されがちであり、ゆっくりと症状進行し、日常生活に支障が出るほど悪化してから、ようやく医療機関に受診して発見されるかたが多いです。 ですが、この病気も他の病気と同じで、早期発見早期治療が非常に重要です。
COPDは、気管支の壁が炎症によって、むくんだり、痰などが大量に出ることにより空気の通り道がふさがれ、呼吸がしにくくなります(慢性気管支炎)。また、気管支の先に肺胞というブドウの房のような形をしたガス交換の場所があるのですが、炎症よって肺胞が壊され酸素を取り込みにくくなります(肺気腫)。

私は、肺気腫の患者さんに説明するときに、肺胞を海綿スポンジのようなものと説明します。海綿スポンジのきめ細かいものが、タバコによって破壊されるとキメが粗くなる、そういうイメージをもってもらいます。この気管支や肺胞の炎症や破壊の原因は、ずばり「たばこ」です。
肺胞は、海綿スポンジのようにキメ細かい房が沢山あります。(左)
タバコを吸うと、この房が破壊され、徐々に肺胞が大きくなりキメが粗くなります。(右)

 COPDは「肺の生活習慣病」、最良の治療法、予防法は禁煙!

壊れた肺胞は、禁煙しても元には戻りません。ですが、禁煙しないとさらに破壊が進みます。初期であろうと進行した時期であろうと、どのステージでも禁煙は有効です。
COPD患者さんの90%は喫煙歴があり、また喫煙者の15~20%がCOPDを発症するといわれています。まさにCOPDは「肺の生活習慣病」であり、COPDの最良の治療法、予防法は禁煙です。
COPDの診断は、肺機能検査(スパイロメトリー検査)で行います。息を深く吸い込み思い切り最後まで吐ききる息の量が肺活量ですが、最初の1秒間に吐き出す息の量が肺活量に対する割合を1秒率といいますが、この1秒率が70%未満の場合になっているかをみます。
この肺機能検査は、人間ドックの標準項目になっております。
人間ドックを受診された方は、1秒率の結果を今一度確認し、喫煙者については禁煙を考えるきっかけにしてもらえればと思います。

日本健康マスター検定公式テキスト p100「睡眠の質が健康のカギ」参照】

 


勝木美佐子 (かつき・みさこ)

医学博士/産業医/労働衛生コンサルタント
日本大学医学部兼任講師、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会社員、日本公衆衛生学会評議員、日本産業衛生学会指導医、人間ドック健診専門医・指導医他、複数の学会で座長も務める。臨床医として診療活動と共に、産業医の経験も豊富。2016年産業医事務所を開業する。