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サルコペニア・ロコモ・フレイルの共通点と違いは?

3つの疾患概念は共通点も多く、その違いが分かりにくいと思います。要介護の危険因子であるサルコペニア・ロコモ・フレイルを理解して用語が使えるように、その概念について整理してみました。

3つの疾患概念は共通点も多く、その違いが分かりにくいと思います。要介護の危険因子であるサルコペニア・ロコモ・フレイルを理解して用語が使えるように、その概念について整理してみました。

要介護の大きな要因となる3つの運動器疾患

健康寿命とは健康上の理由で日常生活を制限なく過ごせる期間のことであり、男性が72.14年、女性が74.79年(公式テキストp12より)といわれています。しかしながら健康寿命と平均寿命との差、すなわち健康上の問題で日常生活に影響がある期間は男女ともに約10年あります。健康寿命を延ばすこと、それによって平均寿命との差をできるだけ短くすることが大きな課題といえます。
最新の厚生労働省の国民健康生活基礎調査によると要介護の原因は

  • 1位「認知症」
  • 2位「脳血管疾患」
  • 3位「高齢による衰弱」
  • 4位「骨折・転倒」
  • 5位「関節疾患」

であります。
4位と5位に運動器の疾患が続き、この両者を合わせるといわゆる「運動器疾患」の占める割合が最も多くなります。私たちの健康寿命を高め、生活の質(QOL)を高めるためには運動器の障害を早期から予防することが非常に大事になります。

サルコペニア

簡単な見分け方として、最近、ペットボトルのふたを開けるのに苦労したり、横断歩道を青信号で渡るときに苦労していませんか?加齢に伴って筋量が減少する病態のことです。筋量の低下とともに筋力または歩行速度の低下を伴った病態として認識されるようになってきています。サルコペニアでは要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まります。またロコモに含まれる概念でもあり、フレイルに影響を及ぼす病態の一つです。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)

ロコモとは運動器の障害により移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高くなる状態のことです。運動器とは骨、関節、筋肉、神経を含めたものであり、体を動かすために必要な器官のことです。運動器に障害が起きると関節の痛みや制限が生じ、筋力が低下し、バランス能力が低下します。その結果、歩行能力が低下し、日常生活に制限をきたします。ロコモの原因は骨であれば骨粗しょう症や骨折、関節であれば変形性膝関節症や変形性脊椎症、筋肉であればサルコペニアが該当します。したがってロコモはサルコペニアと違って、筋肉だけでなくすべての運動器の障害を指しています。ロコモはフレイルを招く病態で、要介護のリスクが高い状態ともいえます。

フレイル

フレイルとは老化に伴い、身体能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のことです。つまり健常な状態と要介護の状態の中間的な状態で、日ごろの生活習慣によって要介護に移行することもあり、逆に健常な状態に戻ることも可能な状態といえます。フレイルには身体的フレイルと精神心理的フレイルと社会的フレイルがあり、中でも身体的フレイルはサルコペニアやロコモの影響を大きく受けることが知られています。

有効な予防は「運動」と「食事」

3つの病態に共通した予防法は、食事(栄養)と運動です。今までのコラムにも書いてきましたが、栄養は肉や魚、大豆、牛乳などに多く含まれているたんぱく質を摂取することが重要です。運動はレジスタンス運動と有酸素運動の組み合わせが良いとされています。特に運動は定期的に継続して行わなければ効果がありません。有酸素運動にはウォーキングやジョギング、自転車や水泳、山登りなどがあります。レジスタンス運動にはマシーンを使用した方法、スクワットに代表される自身の体重を負荷して行う方法などがあります。あなたの好きなものを選択するとよいでしょう。継続して行うためのポイントは運動をしていて楽しい、運動の結果が実感できることが挙げられます。

運動はサルコペニア・ロコモ・フレイルの3つの病態に有効な予防手段であり、健康寿命を延ばし、QOLを高めることができます。

 


飛永 敬志(とびなが たかし)

理学療法士/鍼灸・あん摩マッサージ指圧師/介護支援専門員
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科(介護予防マネージメントコース)卒業。
獨協医科大学埼玉医療センターリハビリテーション科副主任、早稲田大学大学院エルダリー・ヘルス研究所招聘研究員。専門理学療法士(運動器)として、主に運動器疾患を有する患者の身体機能とQOLの向上を目指して、臨床・教育・研究に従事。学会発表・論文投稿多数。趣味はマラソン