【健康な高齢化・各論①生活環境(前編)】
『ワーク・エンゲイジメント』
百年健幸を目指して始めた『笑顔と健幸プロジェクト』を通じ、WHOの提唱する“ヘルシー・エイジング(健康な高齢化)”を社会実装する活動をしています。具体的には、“機能的能力”を決定する生活環境、身体的能力、精神的能力の開発および相乗効果を促す取り組みをしており、具体例やその背景を紹介していきます。
今回は“生活環境”としての労働に焦点を当て、身体と精神の衛生に努める産業保健(健康経営)の観点からワーク・エンゲイジメントについて紹介します。令和元年版労働経済白書1)の中で、少子高齢化による生産年齢人口減少下での働き方をめぐる課題について、「働きがい」を持って働ける環境実現に向けた対策として述べられています(第Ⅱ部第3章)2)。以下の図表は、白書から抜粋した要点です。
図表は以上です。ワーカホリズムに関して研究者間で統一された定義はありませんが、Schaufeli,Shimazu, & Taris(2009)らは“過度に一生懸命に強迫的に働く傾向”とし、①一生懸命に働き過ぎる、②強力かつ強迫的な内発的衝動がある、という特徴を指摘しています。また、逆方向の因果関係がある可能性にも留意が必要ですが、ワーカホリックの度合いの高まりは、労働時間を統計的有意に増加させる可能性があり、こうした労働時間の増加が一因となり、仕事中の過度なストレスや疲労を増大させている可能性があるものと考えられます。
働く方の健康増進にはワーク・エンゲイジメントを高める重要性が示唆されるものの、留意すべき点として、ワーカホリズムとの間には弱い正の相関(r=.19)も確認されております3)。従って企業はワーカホリックな労働者を称えるような職場環境を見直すなど、働き方をめぐる企業風土の在り方についても検討していく必要があります。
【参照資料】
1)令和元年版・労働経済白書(全体サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html
2)「働きがい」を持って働くことのできる環境の実現に向けて(第Ⅱ部第3章の抜粋)
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf
3)新版 ワーク・エンゲイジメント(島津明人、労働調査会)41ページ、図11
北野克宣(きたの かつのり)
医療法人菅井内科 副院長/抗加齢・生活習慣病センター長
医師/産業医/医学博士(金沢大学)
健康マスター推進リーダー/健康マスターエキスパート・普及認定講師
日本抗加齢医学会 評議員/アンチエイジングドック推進委員
学会認定専門医(総合内科、循環器、禁煙、抗加齢医学)
日本臨床コーチング協会認定コーチ
NPO法人 禁煙推進の会えひめ 理事
日本笑い学会 笑いの講師団 “笑顔と健幸の伝道師”
日本臨床栄養協会認定NR・サプリメントアドバイザー
日本ポジティブ心理学協会認定ポジティブ心理学プラクティショナー
ラフターヨガ・インターナショナル・ユニバーシティー認定笑いヨガリーダー
日本ヨガメディカル協会認定マインドフルネスヨガセラピー指導士/セラピスト