【健康な高齢化・各論①生活環境(中編)】
百年健幸を目指して始めた『笑顔と健幸プロジェクト』を通じ、WHOの提唱する“ヘルシー・エイジング(健康な高齢化)”を社会実装する活動をしています。具体的には、“機能的能力”を決定する生活環境、身体的能力、精神的能力の開発および相乗効果を促す取り組みをしており、実例やその背景を紹介していきます。
図表1 健康な高齢化のために機能的能力(生活環境)を開発(健康経営)
“生活環境”としての労働に焦点を当て(図表1)、身体と精神の衛生に努める産業保健(健康経営)の観点から、前回の内容を振り返りつつ“ワーク・ライフバランス(仕事と生活の調和)”についてご紹介します。以下の図表は2、3、5が令和元年版労働経済白書の概要版1)、4は本文版2)から、一部加筆修正しての引用です。
図表2 “働きがい(ワーク・エンゲイジメント)”とは何か、何ではないか
図表3 ワーカホリズムがストレスや疲労に及ぼす影響
ワーカホリックな人ほど、ストレスや疲労が高い傾向にあります。そのため、ワーク・エンゲイジメントスコアが高い人ほど、わずかながらワーカホリックな傾向にあるという結果には十分に注意を払うべきです。従って企業は、ワーカホリックな労働者を称えるような職場環境を見直すなど、働き方をめぐる企業風土の在り方についても検討していく必要があります(図表2、3)。
そこで今月は、健康増進を図りながら“働きがい”や“労働生産性”を高めるために重要な“ワーク・ライフバランス(仕事と生活の調和)”を実現する手段の一つである“休み方(リカバリー経験)”をご紹介します。
先行研究から、仕事でストレスや疲労が蓄積し、そこから活力を得ることが難しくなると、レジリエンスや楽観性などの「個人の資源(心理的資本)」(10月にお話しします)も枯渇するため(図表4)、良い“休み方(リカバリー経験)”によって枯渇から回復・向上させることで、再び良質な仕事のパフォーマンスを発揮できることが示されています(図表5)。
図表4 良い休み方(リカバリー経験)は個人の資源(心理的資本)を回復させる
図表5 休み方(リカバリー経験)の種類と、解決課題との関係性
Sonnentag & Fritz(2007)によると、“休み方(リカバリー経験)”には「心理的距離(仕事から物理的・精神的に離れる)」「コントロール(余暇をどう過ごすか自分で決められる)」「リラックス(心身の活動量を意図的に緩める)」「熟達(余暇中の自己啓発)」の4つがあります。
調査の結果、良い休み方(リカバリー経験)が出来ないと “ストレスと疲労”が蓄積すること、蓄積への影響度は「リラックス」>「心理的距離」>「コントロール」の順であることが示されました(図表5)。このため、4つそれぞれのリカバリー経験をどう開発し組み合わせていけばいいか、みなさんの引き出しを増やせるようコラムで触れていきたいと思います。
次回はストレスと疲労の関係を中心にお話しします。
【参照資料】
https://www.mhlw.go.jp/
https://www.mhlw.go.jp/wp/
北野克宣(きたの かつのり)
医療法人菅井内科 副院長/抗加齢・生活習慣病センター長
医師/産業医/医学博士(金沢大学)
健康マスター推進リーダー/健康マスターエキスパート・普及認定講師
日本抗加齢医学会 評議員/アンチエイジングドック推進委員
学会認定専門医(総合内科、循環器、禁煙、抗加齢医学)
日本臨床コーチング協会認定コーチ
NPO法人 禁煙推進の会えひめ 理事
日本笑い学会 笑いの講師団 “笑顔と健幸の伝道師”
日本臨床栄養協会認定NR・サプリメントアドバイザー
日本ポジティブ心理学協会認定ポジティブ心理学プラクティショナー
ラフターヨガ・インターナショナル・ユニバーシティー認定笑いヨガリーダー
日本ヨガメディカル協会認定マインドフルネスヨガセラピー指導士/セラピスト