サルコペニアを予防しよう
今回はサルコペニアについてです。サルコペニアは初めて耳にする方も多いいかもしれませんが、ギリシャ語のsarco(筋肉)とpenia(減少)からなる比較的新しい造語です。サルコペニアはロコモやフレイル(虚弱)の原因になるので、早期からの生活習慣改善で予防が可能なので、ぜひ知っておいてもらいたい知識です。
サルコペニアとは?
サルコペニアとは筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL(生活の質)の低下、死のリスクを伴うものと定義されています。その中でも失われた筋肉が脂肪に置き換わった状態をサルコペニア肥満と言われています。
ヒトの筋量は30歳代から年間1〜2%ずつ減少し、80歳ごろまでに約30%の筋肉が失われます。加齢に伴う筋量減少は、上肢よりも下肢において、また下肢では下腿よりも大腿の減少率が大きいと言われています。また男性に比べ、女性において早期に筋量減少が起こるが、低下速度は男性の方が初期値の高い分だけ大きいとも言われています。
サルコペニアの有病率は65歳以上の一般高齢者では20%程度で、加齢とともにサルコペニア有病率は上昇することがわかっています。高齢者において筋量の減少がある一定レベル以上に進行すると、身体機能が低下し、ADL(日常生活動作)能力の低下、転倒、感染症、動脈硬化の進行に伴う心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まることが知られています。
特別な機器を使用しない、サルコペニアの発見方法は?
- 歩行速度 0.8m/秒以下
- 握力 男性:26kg以下 女性:18kg以下
握力・歩行速度いずれかの低下を示し、筋量の低下を示す場合をサルコペニアと判定します。
筋量の測定法には生体インピーダンス法(BIA)という方法があり、体組成計という特別な機器が必要になります。四肢の除脂肪軟部組織量(kg)を身長(m)の2乗で除して骨格筋量指数(SMI)を算出します。SMIが男性では7.0kg/m2以下、女性では5.7kg/m2以下がサルコペニアと判定します。
その他に特別な機器を使用せずに筋量を簡便に評価する方法として、指輪っかテストがあります。
指輪っかテスト
両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲むことで、評価します。
「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」の順にサルコペニアの可能性が高まります。
運動習慣と栄養補給で、サルコペニアは予防できる
サルコペニアの予防には、運動単独や栄養単独よりも運動と栄養を組み合わせることで効果が期待できます。サルコペニアの予防法はフレイル(虚弱)の予防法と考え方は類似しております。
運動に関しては、歩行などの有酸素運動に加え、レジスタンストレーニングを週2〜3回の頻度で、3ヶ月以上継続することが非常に大切です。また中年期からの運動習慣が重要になります。
栄養に関しては、たんぱく質やアミノ酸が多く含まれる肉や魚、大豆、牛乳などの摂取が非常に重要です。また魚に多く含まれるビタミンDの摂取とビタミンD産生に作用する日光浴も効果が期待できます。
サルコペニアは生活習慣の改善で、十分予防可能です。あなたの運動と食事の両方の生活習慣を見直してみてください。
【日本健康マスター検定公式テキスト p82「注目が集まる筋トレの効果」参照】
飛永 敬志(とびなが たかし)
理学療法士/鍼灸・あん摩マッサージ指圧師/介護支援専門員
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科(介護予防マネージメントコース)卒業。獨協医科大学越谷病院リハビリテーションセンター副主任、早稲田大学大学院エルダリー・ヘルス研究所招聘研究員。専門理学療法士(運動器)として、主に運動器疾患を有する患者の身体機能とQOLの向上を目指して、臨床・教育・研究に従事。学会発表・論文投稿多数。趣味はマラソン