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子宮頸がんの主な感染ルートは性交渉

実際の医療現場に従事されている皆さまに執筆いただき、健康に役立つコラムを展開しています。コラムカテゴリは健康マスター検定の公式テキストカテゴリーに揃えています。
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子宮頸がんの主な感染ルートは性交渉

20~30歳代の若い女性に増えており、30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまったり、妊娠が出来なくなってしまったりする人も、1年間に約1,000人います。2023年の4月より9価のHPVワクチンが公費で接種できるようになりました。

20歳代から増える子宮頸がん

 

子宮頸がんは、子宮の頸部という子宮の出口に近い部分にできるがんです。毎年、約1.1万人の女性がかかる病気で、さらに毎年、約2,900人の女性が亡くなっています。罹患者は20歳代から増え始めて、現在のところ40歳代が罹患のピークとなっています。

 

子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)というウイルスの感染が原因で起こります。HPVは、皮膚にイボをつくるウイルスで、200種類以上のタイプが見つかっていますが、がんと関連のあるタイプは少なくとも15種類、そのなかでも特に発がんに至りやすいハイリスクタイプは16型・18型の2種類です。主な感染ルートは性交渉で、女性の多くが一生に一度はHPVに感染すると言われています。感染後、90%以上は免疫力で自然に排除されますが、排除されずに定着すると、そのうちのごく一部が細胞に変化を起こして、「異形成(いけいせい)」という、がんの一歩手前の病変ができます。そして、異形成のごく一部が、数年から十数年かけて、子宮頸がんに進むと考えられています。

予防はHPVワクチン 初めて性交渉を経験する前に接種

HPVワクチンは名前の通り、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するためのワクチンです。このワクチンはすでにHPVに感染してしまった状態を治すものではなく、あくまで未然に感染を防ぐものなので、初めて性交渉を経験する前に、接種することが最も効果的です。HPVワクチンには「2価」、「4価」、「9価」の3タイプがあります。因みに、この「○価」というのは、「○種類のウイルスの感染を予防できる」ということを表しています。現在販売されているHPVワクチンは、ハイリスクタイプである16型・18型の感染予防に対する2価ワクチンのサーバリックス®、16型・18型だけでなく尖圭(せんけい)コンジローマ(性器周辺のイボ)発生に関連する6型・11型の感染予防も可能な4価ワクチンのガーダシル®、2021年3月に発売された9価ワクチンのシルガード®9があります。シルガード®9は、4価ワクチンの6型・11型・16型・18型に加え、ハイリスクタイプの31型・33型・45型・52型・58型を予防します。2価ワクチンおよび4価ワクチンにより子宮頸がんの原因の約50~70%、9価ワクチンでは80~90%が予防できると期待されており、HPVワクチンの接種を1万人が受けると、受けなければ子宮頸がんになっていた約70人ががんにならなくてすみ、約20人の命が助かる、と試算されています。

【ワクチンのリスク】

HPVワクチンは、2013年4月に定期接種の対象に指定されましたが、接種後に頭痛やけん怠感などを訴える女性が相次いだため、接種の積極的な呼びかけが中止されました。しかしその後、国内外で安全性や有効性に関する研究が進み、厚生労働省は「子宮頸がんを予防する効果のほうが副反応などのリスクよりも大きい」などとして、2022年4月から積極的な接種の呼びかけを再開しました。

HPVワクチン接種後の体の変化をまとめてみました。

【ワクチンの対象者】

2023年の4月より9価のHPVワクチンが公費で接種できるようになりました。公費接種の対象は、小6から高1にあたる女性だけですが、呼びかけが止まっていた間に接種の機会を逃した女性も、キャッチアップ接種として無料で受けることができます。

【ワクチンを受けても検診が大事】

ワクチンによって、将来の子宮頸がんを予防できると期待されていますが、ワクチンで防げないHPV感染もあります。早期発見、早期治療が重要ですので、20歳になったら、2年に1回、子宮頸がん検診を受けましょう。

男性も感染するHPVに要注意

HPVは男性も感染します。そして、性交渉を通じて、パートナーに感染させてしまいます。それだけでなく、持続感染により、中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどを発症することもありますので、男性にとっても予防は重要です。日本では、2020年12月より9歳以上の4価ワクチンの男性への接種が承認されました。ただし、男性は公費接種の対象外ですので、自費での任意接種となり、1回あたり約2万円弱(全3回で計5~6万円)とかなり高額です。

<参考・引用>

・厚労省:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
・国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス:https://ganjoho.jp/public/cncer/cervix_uteri/index.html
・日本健康マスター検定公式テキスト:「第6章がん対策」P157参照

 


石川 いづみ(いしかわ いづみ)

看護師/キャリアコンサルタント(国家資格)/産業カウンセラー

 

都内の赤十字病院に入職し、手術室、救急外来、内科病棟にて臨床看護を経験。その後、NHK健康保険組合に所属し、職員の健康管理や保健指導、健康診断の企画・運営に携わる。現在は自治体などでの健康セミナーを通して「健康リテラシー向上」の活動を行っている。