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健康診断の見方 数字だけで一喜一憂していませんか?

実際の医療現場に従事されている皆さまに執筆いただき、健康に役立つコラムを展開しています。コラムカテゴリは健康マスター検定の公式テキストカテゴリーに揃えています。
公式テキストと照らしあわせていただくことで、幅広い学習をしていただけます

健康診断の見方 数字だけで一喜一憂していませんか?

前回は、健診と検診の違いについてお話しましたが、今回は健診の見方についてお話します。 健診は年1回の『健康通知表』です。正しい判断で体の点検と修繕をしましょう。

 

 健康診断結果の間違い易い事例を2つ

会社では1年に1回定期健診を行うことが、法律で定められています。そして、その結果については、すみやかに皆さんにお渡しすることとなっております。一方産業医も必ず皆さんの結果を確認し、保健指導や必要がある場合は勤務制限等の措置について、事業者に意見をすることになっています。

健康診断が終わったあとは、山のような結果を一人一人確認する作業が、産業医にはあります。そして、保健指導が必要な方をお呼び出ししたり、また健診の結果が心配な方の健康相談をしたりしていますが、健康診断は体の状態を客観的に知るいい機会と感じます。ただ、その見方を間違うケースに度々遭遇いたします。

<ケース1>
産業医(私):「尿酸値が高いですね、治療が必要ですよ。それから中性脂肪も高くなっています。お酒飲みますか?少し控えましょう。」
Aさん:「尿酸値が高いっていっても、基準値よりたったの3だけ高いだけじゃないですか?それに父親も高かったから、遺伝でしょ。5年ぐらい前からずっとこれぐらいの値だけど、まだ痛風だって起きたことがないし、問題ないですよ。それに、中性脂肪だって同僚のBより、私の方が低いですから大丈夫でしょう。」

<ケース2>
(健康相談にいらして、心配そうな顔で)
Bさん:「先生、白血球が基準値より低いって書いてあるんですが、大丈夫ですか?インターネットで白血球のことを調べたら、免疫の働きをするって書いてありました。私は白血球が少ないから、免疫が低いってことなんですよね。インターネットで免疫が低いことを検索していったら、肺炎になりやすいって書いてありました。マスクして通勤しないとダメですか?混雑した電車に乗っても大丈夫ですか?時差通勤するほうがいいですか?」

Aさんの場合は、治療が必要なほど結果が悪いにもかかわらず、自覚症状がないため、治療は不要と考えています。特に、尿酸値やHbA1cなどは、値が一桁のため、2や3高いだけなのに…という思いがあるようです。また、会社でお互いの結果を見せ合って、自分よりデータが悪い方を見つけては安心しているようでした。

Bさんの場合は、数値が基準値の範囲よりわずかに外れており、アスタリスクが数値の横にあるため、驚いてしまったようです。このデータが何を意味するのか心配になり、インターネットで病気の検索をしたら、ますます不安になってしまったようです。

 

「横の目」だけでなく時間的な経過を見る「縦の目」が必要です

健診や人間ドックでは、血液の値が数値で表されます。基準値も併記されており、基準値を超えたデータについては、赤字や青字になったり、アスタリスクが横についたりと、検診医療機関でその表し方はいろいろあります。基準値とは、正常と思われる方の95%が含まれるように設定されていますが、基準値より僅かに外れている場合でも、心配ない状況もあります。健診機関では、B判定で区分しておりますし、判定区分については、日本人間ドック学会よりガイドラインが出ております。
http://www.ningen-dock.jp/other/inspection 

B判定については「軽度異常」とありますが、経過観察され変化を認めなければ心配ない範囲と考えていただければと思います。
基準値や判定区分にて、他の人と比べる「横の目」も重要ですが、経時的は変化を比べる「縦の目」も必要になります。特にB判定の方については、この「縦の目」でも見ていただくことが大切です。
また、それぞれの検査項目がどういう意味をもつのかも、同じく日本人間ドック学会より詳しく出ておりますので、参考にしてみてください。
http://www.ningen-dock.jp/public/method 


血圧測定も生活習慣の改善で「縦の目」を持ちましょう

人間ドックのドックは、船が大航海を終えて、帰港後修理が必要か点検し、必要であれば修理を行う設備(ドック:船渠)が語源です。ぜひ、みなさんも一年に一回はカラダの点検、修理をしてみてください。

日本健康マスター検定公式テキスト P126~】

 


勝木美佐子 (かつき・みさこ)

医学博士/産業医/労働衛生コンサルタント
日本大学医学部兼任講師、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会社員、日本公衆衛生学会評議員、日本産業衛生学会指導医、人間ドック健診専門医・指導医他、複数の学会で座長も務める。臨床医として診療活動と共に、産業医の経験も豊富。2016年産業医事務所を開業する。